ジキルとハイドな彼

「なかなか帰ってきませんねー…」

小鳥遊は退屈しのぎに煙草の煙を燻らせた。

今日はOAEのメンバーである乾和義の自宅付近に車を停めて、朝から小鳥遊と張り込んでいる。

小鳥遊はカーキのミリタリージャケットに黒のパンツという軽装だ。

俺も黒のウィンドブレーカーにデニムというラフな出で立ちなので、2人でいるといい歳したニートのようだ。

張込みの時はスーツでフラフラしているといかにも怪しいので、なるべく目立たない格好をするようにしている。

男2人でフラフラしている時点で充分怪しいけど。

小鳥遊は大きな口を開けて呑気に欠伸なんかしているので、咎めるようにチラリと横目で視線を向ける。

「すいません、寝不足で」

小鳥遊は視線に気づき、てへっと笑みを浮かべる。

寝不足なのはこっちだ。

結局、薫に突然迫られ何とかかわしたはいいものの、悶々として寝つけなかった。

同じ寝室で眠るなんて自殺行為なので居間のソファーで眠れぬ夜を過ごした。

「昨日は遅くまで飲んでて…」と言いながら小鳥は続け様に小さな欠伸をした。

「なんだよデートか?」

「いや、キャバクラっす」

「相変わらず節操ないな。美人店長さんとはどうなったんだよ」俺は片眉を上げて言う。

「終わりました。彼女、お見合いしたみたいなんで」

小鳥遊はケロリと言う。

瓢々としているように見えるが意外と傷ついているのかもしれない。

最近元気がなかったのもそのせいだろう。

「たまには飲み行くか」

「行きましょう、葛城さん奢りで」

小鳥遊はニヤリと笑う。

相変わらずちゃっかりしたヤツだ。