ジキルとハイドな彼

此処で手を出そうものなら眉を吊りあげて怒り狂うだろう。

尾花さんにも釘をぶっ刺された事だしな。

肩に感じる温もりに意識を向けないようニュースに集中する。

その時、ふと柔らかいものが頬に触れた。

驚いて振り返ると薫の顔がすぐ側にある。

「な、なんだよ急に」

まさかの不意打ちに俺は目を見張る。

しかし、薫は有無も言わさず強引に唇を押しつけて来た。

全く意味が解らない。

この女の思考回路はどうなっているんだ。

パニックに陥るが薫のキスを拒むことなんて俺には出来るはずもなく、されるがままになる。

誘うように柔らかい舌を絡められると、徐々に自制心のタガが外れていく。

俺は彼女の細い身体を抱きしめ深く口付けた。

キスの合間に零れる薫の吐息に俺の思考回路は狂わされる。

このまま、抱いちゃおうかな…捜査も外されたっていいや。

この柔らかい身体を抱きしめていられるなら。

なぁんて邪な想いに脳が支配されていく。

そしたら、誰が薫を助けるんだろう…小鳥遊…?尾花さん…?

なんか…嫌だな物凄く。特に尾花さん。

ニヤリとほくそ笑むキツネ顔がフト脳裏に浮かんだ。

俺はハッと目を開き身体を一気に引き離す。

「なに誘惑してんだ!ばか!危うくやっちゃうとこだったよ!」

「お、お楽しみの続き…」

薫の頬は紅潮し、目もトロンとしている。

こんな表情で言われたら、お楽しみの続きをしてしまいたくなる。

くそ…。

「ムラっときたなら他の男を誘ってくれ」

自分の欲求を抑え込むために最低な事を言ってみると、案の定怒りの鉄拳を鳩尾に食らう。

あえなく撃沈…。

俺はソファーの上で蹲った。


この時彼女が何故いつもと違う行動に出たのか、よく考えなかった事を俺は痛切に後悔することになる。