ジキルとハイドな彼

今日は気分が乗らない上に、捜査も硬直状態でなかなか思うように進まない。

そういえば此処の所、薫の寝顔しか見ていないな、なぁんてフト想いを巡らす。

それはそれで可愛いいんだけど。大人しいし。

そうだ、こんな日は早く帰るに限る。

別に薫の顔が見たくなった、という訳じゃなくてね。

俺はデータを上書き保存してパソコンをシャットダウンすると、広げていた書面をそそくさと片づけ始める。

「あれ?葛城さん、帰るんスか?」

通りがかった小鳥遊に声を掛けられる。

「ああ、今日は気分が乗らないから帰る。何かあったら連絡してくれ」

「了解。ちゃんと電話出てくださいね」

小鳥遊にチクリと嫌味を言われたが「じゃおつかれ」と笑顔でかわす。

尾花さんが打合せから戻る前にそそくさとデスクを後にした。


「あれ?」

21:00を過ぎた頃に薫が家に帰って来た。

「おかえり」

玄関に出迎えた俺を見て驚いたように目を見張っている。

「どうしたの?早かったね」

「夕飯の支度もしてあるから一緒に食べよう」

仕事から帰った直後の引き攣った表情から、一気に薫の表情が緩む。

この瞬間を見るのが俺は結構好きだ。


夕飯を食べ終わりテレビでニュースを見ていると彼女が肩にすり寄ってきた。

ふんわりとシャンプーの香りがする。

これまでの無防備の振舞いからすると、男としては完全に安牌扱いされているようだ。

この俺としたことが…。

今回もきっといつもの気まぐれに違いない。