ジキルとハイドな彼

「それは本当か?!」

…すいません、嘘です、と思わず懺悔してしまいたくなる。

しかし、バレたらもっと怖い目に遭うのでなんとか堪えた。

「はい」

「成川の誤解だったようで良かったよ」

尾花の鋭いキツネ目が少し緩んだ。

しかも名前言っちゃってるし。

「お前がもし沖本薫と個人的な関係にあれば捜査を外そうと思っていたんだ」

「は?」俺は思わず聞き返す。

「個人的な感情が入れば冷静な捜査なんて出来ないだろ?」

尾花は俺の様子を伺うようチラリと視線を向ける。

「捜査に私情を挟むなんて考えられません」

キッパリ言ってのけると、尾花はゆっくり頷いた。

「一時のつまらない情に流されて経歴に傷をつけるような阿呆じゃないと信じてるよ、葛城」

尾花はスッと目を細め薄く笑う。

俺は一礼すると部屋を後にした。

そのまま小鳥遊のデスクへ直行する。

小鳥遊は生気のない虚ろな目でパソコンに向かっていた。

「おい」

俺が勢い良くデスクに手をつくと小鳥遊はビクリと肩を痙攣させる。

「何ぼーっとしてんだよ。白鳥の調査報告書は上がってんのか?」ちょっとした八つ当たりである。

小鳥遊は無言のまま書面を俺に手渡す。

サラッと目を通す限りでは完璧だ。魂が抜けていても仕事はきちんとこなしてる。

さすが東大。