ジキルとハイドな彼

「薫はまだ信じてるんだ、富永のこと」

俺はしゃがみこんで顔を覗きこむ。

沖本薫は惨めな行動を見抜かれた羞恥からか、俺の軽蔑した態度対する憤りからか、恐らく両方の理由で頬をカッと赤くした。

俺はたたみかけるように、沖本薫が知りたくないであろう事実を一気に捲し立ててやる。

強気な表情がみるみるうちに歪んでいく。

「あんたなんて大っきらい!」

沖本薫は買ってきた高級メロンを俺に投げつけて、ついに癇癪を起した。

その瞳から、ボロボロと涙が零れる様を見て、彼女を屈服させてやったような優越感が胸に広がった。

俺と一緒にいるのが耐えきれないのか熱でフラフラになりながらも、沖本薫は必死で部屋から出て行こうとする。

「おい、待てよ」俺はその細い手首を掴んで引き止める。

「もう帰る!離して!」

熱があるくせにあんまり暴れるもんだから、沖本薫は再び膝から崩れ落ちそうになり、俺は咄嗟に両腕で受け止めた。

その華奢な身体は俺の腕の中にすっぽりと納まってしまう。

最初はジタバタしていたけど、熱に体力を奪われ、くったりと俺の胸にもたれかかってきた。

今度は力を込めてしっかり抱きしめた…苦しくない程度に

ああ、俺はずっとこうしたかったなんだな。

本当は深く傷ついているであろう彼女を抱きしめて慰めたかった。

だけど、沖本薫は気丈にも俺に涙一つ見せようとしなかった。

泣く時もクローゼットに隠れ、手負いの獣のようにコソコソ人目を忍んでいたもんだから余計癪に障った。