ジキルとハイドな彼

取調べを一通り終えて別室に控えている上司の尾花に報告する。

尾花や他の捜査官達はこの部屋でモニター越しに聴取室の様子を観察していた。

「麻薬の不法所持を名目にして暫く女を拘束するか。まだ何か吐くかもしれないな」

尾花は顎に手を当て、モニター越しに沖本薫をジッと見つめる。

「その必要はありません」

キッパリ言ってのけると尾花はピクリと眉を上げて此方へ視線を向けた。

「これ以上拘束しても沖本薫からは何ら重要な証言は得られません。あの女は恋人が麻薬の取引に関わっていることなど全く知りませんでした。尾花さんもご覧になった通りです」

「シラを切っているだけかもしれない」

「あれが演技だったら、女優になれそうですがね」

田所がさりげなく援護して、ガハハっと笑う。

「沖本薫と接触していた時も全くそれらしき話を聞くことはありませんでした」

それに…と言って俺は言葉を繋ぐ。

「沖本薫を解放すれば何らかの方法で富永が接触してくる可能性があります」

尾花は顎に手を当てて暫し考え込む。

「葛城の言うとおり、沖本薫は解放しよう」

よかった、これで沖本薫は無罪放免で家に帰れる。

…って、なんで俺は胸を撫で下ろしているんだ。

「ただし」と尾花が言葉を続けたので思わず俺はドキっとする。

「没収した携帯をGPSで追跡出来るようキャリアに手配しておけ」

居場所はいつでもわかるように、ということか。

「了解です。では沖本薫を引き続くウォッチします」

尾花は納得したように、うむ、と頷いた。