ジキルとハイドな彼

プレゼント、と称して沖本薫に贈ったブレスレットのチャームの部分に発信機をつけていた。

肌身離さず持っているよう言っておくと、律儀にもその約束を守っているようだ。

あの女の動きは一目瞭然だ。

富永はマークされていると解り、自分で荷物を届ける事を諦めた。

その代わり、誰かに荷物を届けさせる事を思いつくだろう。

自分を裏切ることなく忠実にミッションを遂行させるであろう誰かに。

沖本薫の他に複数女はいるが、彼女が1番適しているように思えた。

富永を想い純粋で騙しやすい。

そして何より生真面目で全く裏の世界を感じさせない。

何かあったら必ず連絡するように言ってあったが、沖本薫からの着信は一向にない。

ここで頼ってくれば多少の恩情は掛けてやってもいいと思ったが、沖本薫は最後のチャンスを自らむざむざと逃した。

「同情の余地なし、だな」

独りごちると携帯がバイブする。

一瞬、沖本薫かと思ったが緑が丘署の刑事である田所からだった。

『沖本薫に接触しようと試みたところ、気付かれて逃げられました』

『大丈夫ですよ。沖本薫は籠の中の鳥です」

俺の呑気な口ぶりに受話器の向こうにいる田所が戸惑っているのが伝わってきた。