ジキルとハイドな彼

数週間後―――

富永と仲卸の間に大きな取引がある、という情報が入った。

緑が丘署の協力を得て、富永聡を徹底的にマークする。

富永は狡猾な男で今まで何度も捜査の網の目をかいくぐって来た。

捜査は難航し長期化する気配が漂う。

捜査員達にも疲弊の色が見えて来たので、何としても今回は取引の場を抑えたい。

夜になり、富永が動きを見せたと自宅近くに張り込んでいた捜査員から連絡が入った。

そのまま尾行を続けるよう指示したが、途中でまかれたようだ。

思わず舌打ちする。

次に富永のとるであろう行動を考えるんだ。

自分に言い聞かせ髪をくしゃりとかきあげる。

富永の立ち寄りそうな場所は徹底的にマークした。

残るは…

ふと沖本薫の脳天気な笑顔が頭に浮かんだ。

「世田谷区春日町に住んでいる女の部屋へ向かってください」

俺は携帯電話で指示をする。

「了解」という短い返答がありそのまま電話は切れた。

俺は立ち上がり、スーツを羽織る。

「あれ?何処行くんすか?葛城さん」

後輩小鳥遊が突然出掛けようとしている俺に驚いた様子で声を掛ける。

「沖本薫のとこ。富永は現れる…多分」

後はよろしくーと言って、俺は捜査本部を後にした。

現場近くで車を降りるとスマートフォンで沖本薫の位置情報をチェックする。

ビンゴ

23時を過ぎているというのに沖本薫は家を出てどこかに向かう様子だ。