ジキルとハイドな彼

「薫」聡はさっきまでヘラヘラしてたくせに急に神妙な顔つきになる。

その上肩に手を回してきた。

「ちょっと!離してよ!」抵抗すると聡は手に力を込めて押さえつける。

「勘違いするな。誰かに後を付けられてるみたいだ」

「ええ?!」後ろを振り向こうとすると「みるな!」と小声で制された。

「少ししたら斜め左後ろを振り返って見ろ。黒いウィンドブレーカーにデニムのパンツの男が後を付けてる。恐らく俺を監禁してた奴の1人だ」

「どうして?」

「隙をついて、また拉致しようって腹づもりだろ。俺と薫を」

「警察に電話…!」

「やめろ。下手に警察呼んだのがバレたら多少手荒でもすぐに行動に移してくるぞ」

「じゃあ、どうすればいいの?」緊張で顔が引き攣る。

イタリアの高級外車ディーラーの前で聡が立ち止まった。

「やっぱりかっこいいなあ!マセラティ!俺もビッグになって乗りてえよ」

こいつアホか…

「そんなこと言ってる場合?!」

「いいからウィンドウ越しに後ろ見てみろ」小声で聡が言う。

ガラスに映った私達の後ろには確かに黒いウィンドブレーカーを着ている男が映っていた。

何やら携帯電話で話している。仲間と連絡を取り合っているのだろうか。私は恐怖で身が硬くなる。

「とりあえず車道に近づくとマズイな。隙をついて車に押し込められ連れて行かれる。適当な建物の中に入って警察のお迎えを待つとするか」

「じゃあ、ヒルズへ戻る?」

「いや、人混みに紛れて連れて行かれるのがオチだ。なるべく人気のない方がいい」

人混みに紛れ聡に手を引かれる。