ジキルとハイドな彼

私は静かに聡の目を見つめた。

ふざけた事ばかり抜かしているので腹を立てていたが、ここまで来ると哀れにすら思えてくる。

「悪いことしたら罰を受けるのは当然でしょう」

私が静かに聡の目を見つめると「そうか…」と力なく笑う。

「確かにほとぼりが冷めるまで塀の中にいるのも悪くないな」

私は無言で頷くと鞄からスマホを取り出す。

「待ってくれ!」

「何よ。まだごねる気?男らしくないわね」私は顔を顰める。

「出頭する前に腹が減った」

「はあ?」突然聡がトンチンカンな事を言い出したのでずっこけそうになる。

「腹が減っては戦は出来ぬっていうだろ。六本木だったらアジャンタのカレーがいいなあ」

「あんた自分の置かれた立場わかってる?」

「刑務所に入る前、最後の晩餐にアジャンタのカレーが食べたい。薫もお腹空いてるだろう?」

タイミングよく私のお腹がグウと鳴る。確かに走りっぱなしだったからお腹が空いている。

「決まり、だな」二カっと悪びれない笑顔を浮かべた。

本当に馬鹿に着ける薬はない。

私はあきらめたようにこっくり頷いた。