ジキルとハイドな彼

「警察に言おう、とは思わなかったの?」

聡は私の発言を軽蔑したかのように鼻で笑う。

「そんな事したら、金が引っ張れなくなる」

「でもそんな無茶したら金どころか命が危ないじゃん。現に拉致監禁されてたし」

「ぬかったよなー」

聡はケロリとして煙草の煙をゆっくり吐きだす。

「でもハイリスクハイリターンだろう。株でリスクを冒して首を吊るやつだっている」

全然違う。 株は合法だ。

「そうなると貴方は組織を裏切る行為をしていたって事でしょ。ネックレスと鍵を返したから問題が解決するっていうほど単純でもなさそうね」

「そうだなあ。何らかの制裁を受ける可能性は本来だったら高いだろうな」

「本来なら?」私は眉根を寄せて聞き返した。

「ラッキーな事に警察が色々動いてるみたいだから、下手に組織も動けないみたいだ」

聡は得意げにニヤリと笑った。

「あの後、警察に捕まったらしいな。薫をずっと着けてたOAEのメンバーから聞いたよ」

「そうよ!あのアタッシュケース!濡れ衣着せられて酷い目あったんだからね!」

人目があるので罪状は伏せたが、フツフツと怒りがこみ上げてきた。

「水口っていうジャーナリストに届ける件も嘘?」

「薫に荷物を運んでもらうための嘘だよ」

…やっぱり聡は悪びれてない。

「まさか愚鈍な日本の警察が薫にまで目を付けてたとは」聡はおかしそうに声を上げて笑う。

「ダメよ、警察を悪く言っちゃ。これからお世話になるんだから」

私はニッコリと微笑んだ。

「薫…まさか」

「勿論通報するよ」

「自分の保身のために俺を売るの?」