ジキルとハイドな彼

「その桐谷さんって人が今回の黒幕な訳?」

「桐谷さんはいわば、きっかけに過ぎない。所詮組織に使われている一業者だ。利用価値があると踏んで、俺に近づいて来たんだ」

聡は煙草の煙を吸うと、ゆっくり口から吐きだす。

「後々知ったことだけど、俺の会社に融資した金は麻薬の密輸組織から流れて来た金だったしな」

「そもそも密輸組織って何よ。それって…OAEのこと?」

私はコーヒーを一口飲み聡に訝しい視線を向ける。

「薫の口からOAEの名前が出るとはな!警察にでも吹きこまれたか?!」

聡はおかしそうにハハっと声を上げて笑う。

笑いごとじゃない。

私は眉間にギュッと皺を寄せて聡を睨みつける。

「薬を実際に卸して販売する実行部隊は察しの通りOAEだ。俺を拉致監禁してたのもね。だけどそのフィクサーはもっと大規模な組織…」

私はハッと目を見開いた。

「黒龍会」

「ご名答」聡はバチリと両目でウィンクする。

「じゃあ、その借金を返すために黒龍会に手を貸す羽目になったってこと?」

「まあ、直々に取引をしていたのはOAEだけど、間接的にはそうなる。家具の輸入代行なんて色々隠すところがあって密輸に売ってつけって訳だ」

聡は乾いた口を潤すようモヒートをゴクリと一口飲んだ。

「今回、タイに事業を展開するのも黒龍会が密輸で得た莫大な利益をマネーロンダリングするためだしね」

ここまで聡が手広く悪どいことをしていたとは…。

私は生唾を飲み込み、気を落ち着かせるためにコーヒーを口に含む。