ジキルとハイドな彼

「鍵は持って来たか?」

私はポケットから茶封筒に入れた鍵を取りだし、男に渡す。

男は封筒を開けると中身を確認する。

握りしめた手に、ジワリと汗が滲んだ。

「ダイヤのネックレスは?」

私は首に着けていたネックレスを外して差し出す。

「あんたもさぁ、美人なんだから男を見る目を養った方がいいんじゃねぇか」

ニヤニヤ不快な笑みを浮かべながら、酒ヤケは不躾な程ジロジロと人の顔を眺める。

余計なお世話っだっつーの…!

と、思いつつも怖くて視線を合わすことが出来ない。

「そうね。勉強になったわ」なんとか平静を装って切り返す。

酒やけ男は私の手からするりとネックレスを奪うとそのまま展望室を後にした

その後ろ姿が見えなくなると、全身から力が抜けていく。

「薫!」

両手を広げて聡が近づいてきた。

「聡…!」

私は一歩踏み出す。

次の瞬間、その顔面を殴りつけた。…勿論グーで。

「ふざけんな!この馬鹿男!」

一瞬周囲が凍る。

聡は思いがけない衝撃に尻餅を着いて目を丸くしている。

「で?洗いざらい話してもらおうじゃないの?」

私はしゃがみ込んで倒れた聡の襟首を掴むと、真っ正面から睨みつけた。