ジキルとハイドな彼

ホームを目指して地中深くまでエスカレーターを駆け下りていく。

すれ違う人は怪訝そうな視線をこちらに送るが気にしてる場合じゃない。

ようやくホームに辿りつくと発車ベルが鳴っている。

最後の力を振り絞って駆け込むと、私が乗りこんだ直後にドアが閉まった。

ゼエゼエと肩で息をつき、地下鉄車内で息を整える。

六本木に到着しホームに降り立つと、駅構内図でヒルズの最寄り出口をチェックする。

階段を見つけると地上目指して全力で駆け上がった。

日頃の運動不足が祟り筋肉は軋み、息が上がる。

苦しくて足がもつれそうになるが止めることは許されない。

額からは汗が吹き出ていた。

どうして自分を騙した男のためにこんなに必死になってるんだ!

愚かな自分にまで怒りがこみ上げてくる。

ようやく、地上に出ると目の前に大型商用施設がそびえ立つ。

適当な入り口から中にはいると華やかな迷路に迷い込んだようだ。

ブランドショップが並ぶフロアをダッシュで横切る。

裕福そうな老夫婦、小綺麗な格好でバギーを押す若いママ達。

バシっとスーツを着こなしたサラリーマン。

猛ダッシュしている地味なOLは明らかに異質だ。

万引きでもして逃げてると思われたらどうしよう。

ようやく展望室に通じるエレベーターを探し慌てて乗り込んだ。

高速エレベーターというものらしく、グングンと地上から登っていき、あっという間に最上階だ。

扉が開くと展望室のエントランスに出る。

ゼエゼエと肩で息をしながら乱れた髪でチケットを一枚購入する。

受付のおねえさんは一瞬ギョっとした表情を浮かべたがすぐに営業スマイルに戻った。さすがプロ。

時計を見ると12:00ジャスト。

間に合った…