ジキルとハイドな彼

待ち合わせは正午だったが余裕を見て11時前に家を出た。

電車を乗り継ぎ新宿駅で降りる。

西口に設置されたコインロッカーに行くよう昨日の電話で指示されていたのだ。

指定されたコインロッカーに辿り着くと、教えられた通りの暗唱番号を入力する。

フタが開くと中には携帯電話が入っていた。

きっと聡を拉致している犯人と連絡を取るためのものだろう。

腕時計を見ると、11:30。

大江戸線で都庁前に移動しようとすると、犯人が用意した携帯電話が鳴る。

着歌は西野カナだった。

いい歳してこの歌を選曲したと思われたら嫌なので素早く通話ボタンを押す。

「もしもし」

『おう、姉ちゃん、携帯電話は無事ゲットしたようだな』

電話から比較的若めだが酒やけしたようなダミ声が聞こえてくる。

「なんで着歌がカナやんなのよ」

『好きなんだ。悪いか』酒やけはちょっとムッとしたようだ。

『待ち合わせ場所を変更する。六本木ヒルズの展望室だ』

「はあ?!」

『人目に付く場所だ。構わないだろ。じゃあ遅刻すんなよ。遅れたら彼氏は殺すからな』

一方的に言って電話は切れた。かけ直そうとしても非通知だ。

つか、もう彼氏じゃねーし!

腕時計をチラリと見ると、あと30分時間はあるので急げば間に合う。

タクシーだと渋滞に巻き込まれるかもしれない。

私は迷わず地下鉄の入口に向かいダッシュした。