ジキルとハイドな彼

食事の後片付けを済ませて、リビングへ向かうとコウがソファーに座りテレビを見ている。

私はいつものように隣に腰掛けた。

明日の事を思うと、不安が黒い霧のように胸の中に広がる。

コウにひっついて肩に頭を乗っけると、いつものいい匂いがする。

シャツを隔てて人肌の温もりが伝わってきて、緊張が溶けていくようだ。

よく、危機的状況に陥った男女が恋に落ちる気持ちが解るような気がした。不安な時って人肌恋しくなる。

チラリとコウの表情を伺う。

私のスキンシップはいつもの事なので特段気にしていない。ルームウェアで寛いだ様子だ。

その隙だらけの格好も母性本能がくすぐられてキュートである。

こんな魅力的な男と一緒に住んでいたのに今までの私ってばどうだ。

リビングのソファーでうたた寝したり、ドアを脚で閉めたり、摘み食いしたり…。

全く自然体もいいとこだった…。

気を張って上品に振舞った所でコウに女性として意識される筈がないと思っていた。どうせボロが出るしね。

しかし「明日、私は死ぬかもしれない」そう思ったら、この後に及んで欲が出てきてしまった。

もっとコウに触れてもらいたいし、触れてみたい。

一晩くらい夢を見てもいいんじゃないだろうか。

万が一、明日運悪く息絶えたとしてもよい冥途の土産になるし、もし助かったとしても聡ごときに危険を冒した自分へのご褒美、と思えばいいことだ。

コウとこんなにも一緒に過ごしていて何も起こらなかった方が追い追い後悔することになる。

決めた…。