ジキルとハイドな彼

『その貸金庫の鍵をダイヤのネックレスと一緒に指定の場所へ届けてほしい』

「また届けもの?もうごめんだわ!」

速攻でお断りさせていただく。

前回のアタッシュケースの中身がとんでもない代物だっただけに、当然のリアクションである。

『実はそのネックレスの中にはパスワードを書きこんだナノチップが内蔵されているんだ』

「はあ?!」思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

後輩の女の子がチラリと不信な視線を向ける。

私は声を落としてまくし立てた。

「どうゆうこと?!最初から私を利用するつもりだったのね!」

『薫!切らないでくれ!切ったら俺が死ぬものだと思って』

「どうなっても知らないわよ!この人でなし!!」

『俺が信用できるのは薫しかいなかったんだ!』

「今度は泣き落とし?」

『いや… 本当に。俺の周りの奴らはチンピラまがいで、何かにつけて人を利用することばかり考えてる。でも薫は違うだろ。だから託した』

聡の意外な発言に思わず私は黙り込む。

悔しいが確かにダイヤのネックレスは三度修理に出されて、現在コウの家にあるジュエリーボックスに律儀にしまってある。

『その鍵とネックレスと引き換えに、俺の事を解放すると拘束している奴らは言っているんだ。そのために電話することも許可された』

「断ったら?」

『俺は消されるだろうなあ』聡は自嘲気味に笑った。

『また元の関係に戻りたいなんて図々しい事は言わない。だから命を助けてくれないか?』