ジキルとハイドな彼

小鳥遊の話によると、今日もコウの帰りは遅くなるということだった。

ケイナンストアで買い込んだ食材は一旦冷蔵庫で保存して、夕飯は鍋焼うどんを一人でひっそりと食べた。

風呂上がりにリビングのソファーにどかりと腰を下ろす。

私は冬にもかかわらず、Tシャツに短パンというまるでエコを無視した軽装だ。

缶ビールのプルタブを開けると炭酸の抜ける音がした。

「ぶはー!」一気にビールを飲むと、おっさん染みた大きな溜息をつく。

しかし、今日も疲れたわ…。

ギャーギャーと喧嘩する友里恵と尾花さんを思い浮かべると、より一層疲労感が増す気がする。

私はお行儀悪く、ダイニングテーブルの上に脚を乗っけてテレビをつける。

バラエティー番組を見てヘラヘラ笑いながらビールを飲んでいると、リビングのドアが突然開いた。

「ただいま」

くたびれたコウが姿を現す。

「…お、おかえり。早かったのね」

突然の事に私はギクリと固まり、引き攣った笑みを浮かべる。

「3日連続で殆ど寝てないからね」

コウの目の下にはクッキリ隈が出来ており、その表情は虚ろだ。

いつものキラキラオーラはすっかり影を顰めている。

「風呂入って寝るわ」コウはネクタイを緩めながら言う。

「食事は?」

「食べた」

そっけない返事をしてリビングから出て行こうとする…がクルリと此方に振り向く。

「薫、テーブルの上に足乗っけないでくれる?」

コウに不機嫌そうに言われて、私は慌てて足を引っ込めた。

「まったく」呆れたように目を細めて私を一瞥すると、今度こそリビングから出て行った。