ジキルとハイドな彼

『何なんだ!あの生意気な女は!』

ドアが閉まった瞬間、尾花の怒鳴り声が聞こえる。

『まーまー、尾花さん、本条さん達は善意でご協力いただいているんですから』

コウが宥めているようだ。

『善意だと!?当然の事だろ!義務だ義務!あんな生意気だから嫁の貰い手がつかないんだ!』

その瞬間、友里恵がバチンと箸を机に叩きつけ勢いよく立ちあがる。

…あーあ、リミッターが振り切れたな。

私は小さく溜息をつく。

「ちょっと!全部聞こえてるわよ!」友里恵勢いよくドアを開けて言い放つ。

「貴方だってそんな高慢な態度だから結婚出来ないんじゃないの?!」

友里恵の反撃に尾花はピクリと眉を吊り上げる。

「勘違いしないでもらえますか?本条さんと違って私は選ぶ立場にあるんです。故に出来ない、訳ではなくしないだけです。そもそも結婚なんて負債を背負うようなものだ」

「そう思ってるのは尾花さんだけなんじゃないですか?どうせ彼女もいないんでしょ」

「まーまー」と小鳥遊が間に割って入ろうとすると尾花と友里恵の両者から鋭い視線を向けられる。

ギャーギャー口論を繰り広げる二人を外野でなす術もなく見つめながら、私とコウは目配せをして力なく笑った。