ジキルとハイドな彼

「私達はお昼ご飯を食べているんだから、そうゆう物騒な話は外でしていただけませんか」

島田屋のカツ丼を食べている途中に話で中断されて友里恵はご立腹のようだ。

空腹のため日頃の可憐な佇まいからは想像つかないくらいやさぐれている。

そもそも貴重な週末を潰された時点で、友里恵の怒りのメーターは、かなりの所まで溜まりつつある。

どんな些細な事柄がきっかけで大爆発が起きるかわからない。

「失礼、席を外します」コウが慌ててお詫びする。

が、しかし尾花はそうは問屋が下ろさない。

ほほう、と言って眼鏡の奥のキツネ目がキラリと光った。

「そもそも、お昼を食べる場所として提供していますがここは警察署内の一室です。私達がどんな話をしようと差しさわりはないと存じますが」

「だからってそんな機密情報を一市民の私達の前でベラベラ話すなんて、いくら守秘義務があると言っても迂闊ではありませんか?」

友里恵が反論すると尾花は、悔しそうに口を横に結ぶ。

その姿を見て、友里恵はフフンと鼻で笑う。

「じゃあ、さっさと出て行ってくださーい。私達はカツ丼食べるんで」

友里恵はニッコリと有無を言わせない迫力のある笑みを浮かべる。

「行きましょうか、尾花さん」

コウは尾花の肩にそっと手を置くと慰めるように微笑み掛ける。

「小鳥遊も行くぞ」

コウに促されて小鳥遊もカツ丼を片手に席を立った。

「では食事が終わられたら声を掛けてくださいね」

コウが紳士的に言うと、刑事三人は部屋から出て行く。