「今日もスーパー寄って行く?」小鳥遊がハンドルを握りながら尋ねる。

「お願いしていいかな」

「最近甲斐甲斐しく夕飯作って待ってるんだってね。奥さんみたいじゃん」小鳥遊がニヤリと笑う。

奥さん、という単語でハッと思い出す。

「そういえば、私が毎日彼氏に迎えに来てもらってるって会社で噂されてるらしいわよ」

「彼氏って俺の事?」小鳥遊は嫌そうに眉根寄せる。

「何よ、その顔」

「グラマーで色っぽい女性がタイプなんだ」露骨に迷惑そうな顔をする。

こっちこそ、お前のような軽薄な輩はお断わりだ、と言いたい所をグッと我慢する。

「失礼ね」と言って片眉を吊り上げた。

途中食材を買いにスーパーに寄ると、小鳥遊はまた「遅い」と言って文句タラタラである。

「今日はデート?」いつもよりスピードを上げて車を走らせている小鳥遊に尋ねる。

まあね、と言って小鳥遊は頬を緩ませる。

「例の倖田來未似の人?」

倖田來未似の子、とはここ最近彼がご贔屓にしているエロかわいい子だ。

「うん」小鳥遊はニッコリ満面の笑みを浮かべる。

「不倫中の有閑マダムはどうしたのよ?最近全然会ってないじゃない?」

「情緒的じゃないなあ、薫さんは。大人の火遊びと言ってよ」小鳥は眉を顰める。

「マダムとは別れたよ」

「ええっ?」思わず驚いて聞き返す。

「最近忙しいから」

「あっそ」私は肩を竦める。どうやら小鳥遊は倖田來未似にご執心らしい。