お姉さんを彼女だと思って大荒れしてた、なんて言える訳がない。

その上倒れるまでヤケ酒を煽っていたなんて。

「馬鹿だねえ、薫は」

コウは呆れたように言うと、私の頭を大きな手でわしゃわしゃ撫でる。

「彼女がいたら薫を家に置いておけないだろ?」

それってコウは今お付き合いしている特定の女性がいないって事?

不覚にも胸が高鳴ってしまった。

あんなに身の程知らずだ、釣り合わないなど散々いってたくせに、まだ一縷の望みを抱いてしまうなんて自分の諦めの悪さに呆れてしまう。

「そっか、そうだよね」私は思いっきり頬を緩ませた。

「だから、安心してうちに帰っておいで」

コウは柔らかな笑みを浮かべる。

「今晩はお説教なし?」

私はチラリと上目でコウの様子を伺う。

「そうだね。今晩薫が無謀な行動をとったのは、どうやら俺に原因があるみたいだから」

コウはニッコリと花のように微笑んだ。

「ななな何言っちゃってんのよ!自惚れないでよ!」

私は顔を赤くしムキになって否定する。

その様子を見てコウはクスリと微笑む。

なんだかお見通しのようでいたたまれない。

コウは鼻の頭に皺を寄せて佇む私の手を握る。

「ほら、行くよ」

やっぱり私はこの手を離すことは出来ない。