ジキルとハイドな彼

「姉だよ」

「…はい?」

思いがけない回答に私は阿呆のように口をポカンとあける。

「一緒に暮らしてる男と喧嘩したみたいで、いきなりうちに押し掛けて来たんだ」

「う、う、う嘘よ!全然似てなかったもん!」

浮気した男の常套手段のような言い訳にムキになって反論すると「うん、俺とは全く似てないんだ」

コウはサラりと肯定する。

「だけど、金曜日ホテルのラウンジで会った俺の兄を覚えてるかな?」

おっかないコウの兄を頭の中で思い浮べる。

少し吊ったアーモンドアイが印象的な正統派の美形だった。

その後にコウの部屋で会ったあきの顔を思い浮べる。

猫のような大きな瞳が興味深そうに私の姿を捉えていた。

そしてその二人の顔を交互に思い浮べる。

「何よ、そっくりじゃない」私は茫然とする。

「これで信用してもらえた?」

コウは可笑しそうに私の顔を見てクスリと笑う。

「じゃあ、なんで言ってくれなかったのよ!私を無理矢理ホテルに泊らせて」

「だって恥ずかしいじゃないか。いい歳した男の部屋に姉が泊りに来るなんて」

コウは口元に手を当てて顔を背ける。なんだそりゃ…どんなプライドなんだ。

「それに、俺の部屋に女性がいたなんて知れたら実家が大騒ぎになる」

「仲の良いご家族なのね」

「そういう訳じゃない。何と言うか…葛城家は特殊なんだ」コウは苦笑いを浮かべた。

「そうなんだ…私はてっきり」

「てっきり?」コウは首を傾げて聞き返す。

「その…お付き合いしている女性がいるのかと思って…」

最後の方はゴニョゴニョと言葉を濁した。