ジキルとハイドな彼

騒がしい尾花たちがいなくなると病室はシンと静まり返る。

私とコウは病室に二人きりになる。なんとなく気まずい。

「そろそろ点滴が終わるね」コウは病室を出て看護婦さんを呼びに行ってくれた。

暫く横になっていたのがよかったのか、私の体調はすっかり回復している。

看護婦さんに点滴を外してもらい、簡単な事務手続きを済ませると私達は病院を後にする。

帰りは小鳥遊の愛車プリウス―――と言っても公用車なのだけど―――をコウが運転して送ってくれることになった。

病院から外に出て駐車場へと向かう途中冷たい風が吹きつける。

「へくしっ!」思わず私はくしゃみをしてしまった。

コウは自分のマフラーを外して私にグルグルと巻き付けてくれる。

「帰ろう」

コウはそのまま私の手を握る。

「え…いや…でも」

あきの事が頭を過り、私は思わず立ちすくんでしまう。

「やっぱり、気にしてる?今朝の事」

コウは此方に振り向き私の顔を覗きこむ。

とうやら今朝部屋で私とあきが鉢合わせになったことを知っているようだ。

「そりゃ気にするでしょ。私がいたらお邪魔なんじゃない?」

冗談めかして言おうとしたが声が上擦っているし、笑顔も引き攣って変な顔になっているだろう。

その様子を見てコウはクスクス笑う。

「何がおかしいのよ」私はムッとして唇を尖らせた。

「激しく誤解しているみたいだから」

「どうゆうこと?」私は訝しい視線を向ける。

「今朝部屋で会った女性だけど…」

その言葉の続きを聞きたくなくて私はギュッと目を瞑る。