ジキルとハイドな彼

「で…?」

まさにハ―レクイーン顔負けの美男子が肘をついて私を見つめている。

「その時の男性が今付き合っている彼」

「名前は?」

「富永聡。字は聡明の聡で『さとし』っていうの。歳は35歳、ど・く・し・ん」

聞かれていないことまで答え、両頬に手を当てて照れている私を見て葛城は失笑している。

いつの間にか、私と葛城はタロットカードそっちのけで、恋愛相談に耽っていた。

この男、なかなかの聞き上手で、「ほお」とか「それはそれは」などと絶妙なタイミングで相槌を入れてくる。

その上、友里恵すら取り合ってくれないような些細な愚痴さえ、飽きもせず真剣に聞いてくれるのだ。

ほぼボランティアの域に達しているのではないかと思う。

お客さんが来なくて余程暇なのだろう。

すっかり私は乗せられて、意外なことに聡は奥手で、私達はまだプラトニックな関係にあるという余計なことまでペラペラ喋っていた。

「なるほど。では薫はスッカリ彼にハマってしまっているのですね」

コウは神妙そうな顔つきで紅茶を一口飲む。

そして、今もコウのペースにもスッカリ乗せられている。

私はきっと流されやすい女なのかもしれない。

「そうなのよ。会えば会うほど夢中になっていしまって、会わずにはいられなくなる。まるで彼は麻薬みたいだわ」

コウは声を上げて笑出した。

「笑うとこじゃないんだけど」非難がましく睨みつける。

「いや、言い得て妙だな、と思って」

私が首を傾げて不思議そうにしていると、いや、こっちのこと、と言って曖昧にはぐらかされた。