ジキルとハイドな彼

「飲みの話しはさて置き…」尾花はクイっと人差し指で眼鏡を上げる。

「今日の所は体調が優れないようですが、また後日お話しをお聞かせいただくかと思います」

ああ、またか…。

私は力なく頷いた。

「追ってご連絡が行くのでよろしくお願いします」

例のごとく、尾花は折り目正しく頭を下げた。

「点滴が終わりましたら帰っていただいて結構です。自宅まで送りましょう」

突然の申し出に私はギクリとする。

尾花は私がコウの家に転がりこんでることを知っているのだろうか。

「尾花さんには目を通していただきたい報告書がたんまり溜まっているので、送りに言ってる場合じゃないっす」

小鳥遊がすかさずカットインしてくる。

「送るだけならそんな時間は掛からないだろう」尾花は食い下がる。

「いいんですよ、そんなん葛城さんに任せとけば」

「しかし…」

「大丈夫です。私が送ります」

尾花が何か言いかけたがコウは有無を言わせない迫力のある笑みを浮かべる。

「沖本さんのお見舞いも済んだ事ですし仕事に戻りましょうか」

「お前、もう12時近いぞ?!まだ働かせる気か?!」

上司であるハズの尾花が異議申し立てる。

「何言ってるんすか。刑事にとってはまだ宵の口っす。ささ行きましょう」

小鳥遊は病室から尾花を追い出そうとせきたてる。

「では、沖本さん、また後日」

尾花は帰り際、律儀にもう一礼する。

「じゃ、薫さんお大事にー」

小鳥遊は軽い口調で挨拶すると、尾花には見えないようバチっとウィンクする。

相変わらず、やるわね小鳥遊…。