ジキルとハイドな彼

「あ、あの!小鳥遊…さん。先ほどはありがとうございました」私はぺこりと頭を下げる。

「仕事すから」小鳥遊は例のごとく軽く言ってヘラヘラ笑っている。

「ご協力いただいている身で、あれこれ言うのも差し出がましいとは思いますが…」

尾花の目の奥がギラリと光る。

「いいましたよね?1人で外出するなって」

眼鏡の奥のキツネ目が私を睨みつける。

こ、こ、こ、怖い。

強盗と同じくらいの恐ろしさだ。

「い、言いましたね」私はしどろもどろになってしまう。

「じゃあ、どうして外出したんですか?しかも夜」

尾花の冷ややかな視線が私に突き刺さり、私は縮こまる。

「す、ストレスが結構溜まってて、たまには飲みに行きたいかなー…なんて思って」

まさか…と言って、尾花はハッと目を見開く。

「デートですか?」

思わず私はズッコケそうになる。

「やだなー、尾花さん!デートだったら独りで帰る訳ないじゃないすかー!」

小鳥遊は上司に対しても容赦なく軽薄だ。

「そ…そうなのか?そういうものなのか?葛城?」

尾花の瞳に動揺の色が浮かぶ。

「それはケースバイケースだと思います」

コウはポーカーフェースで冷静に答える。

「と、言うことは、今日沖本さんがデートだった可能性もあり得る、と言うことか」

尾花は顎に手を当てて深刻そうに言ものの、その内容はくだらない。

「違いますよ。友達と飲んでいました。女性の」

「そ、そうか。それはよかった」尾花はホッとして笑みを浮かべる。