ジキルとハイドな彼

その瞬間、小鳥遊の強烈な蹴りが強盗の背中に入り再び倒れ込む。

小鳥遊は私の腕を掴み、庇うように自分の後ろへ押しやる。

「さがって!」

小鳥遊の今までみた事のないひきつった表情に圧倒され、頷くことも出来ずにただ従う。

強盗は立ち上がり体制を立て直したかと思うと、無駄のない動きでナイフを小鳥遊に振りかざす。

小鳥遊も私を後ろ手で庇いながら紙一重で交わす。

すごい…

コウがボディガードに最適だと言ったのがわかる。

強盗の隙をつき脇腹に蹴りを入れた…と思ったが、敵もさることながら、うまく衝撃を受け流しながら交わす。

蹴りが入りきらなかったものの、それなりのダメージは受けたようで、強盗は脇腹を抑えている。

2人が対峙していると、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。

強盗は「覚えてろよ」と捨て台詞を吐き、粘つくような視線で私を一瞥すると、フラリと身を翻し暗闇に姿を消した。

私の膝はガクガクと震えて、立っていられない程だ。

バックを抱え込み、その場に座り込む。

「薫さん…」

「な、な、なに?」

「産まれたての子牛みたいになってますね」

無表情のまま小鳥遊はボソッと呟いた。

ああ、やっぱりこの男もどっか変…。

「ごめん、小鳥遊気持ちわる…」

私は植え込みに這って行き、リバースした。

「薫さぁん、大丈夫すかー?」

超軽い小鳥遊の声を遠くに聞きながら、私は極度のストレスとアルコールのためか、意識を失った。