ジキルとハイドな彼

フラフラした千鳥足で近所の公園を通り抜ける。

その時、数メートル後ろから迫ってくる足音に気がつく。

きっと、気のせいよ。飲んで帰ってきたサラリーマンでしょ。

自分にそう言い聞かせたものの、緊張からか自然と歩調は速まってくる。

しかし、後ろの足音は遠ざかることはなく、同じペースでついてきていた。

不吉な予感がして、ふと振り返った瞬間、酔っ払った頭がパニックに陥る。

そこにいたのは、忘れもしない、目だし帽を被った不気味な男の姿だった。

閑静な住宅街のため、周りはシンと静まり返り、ハアハア、という男の荒い息ずかいだけが聞こえる。

私と目があうと「見いつけた」と言わんばかりに強盗はニヤリと笑う。

その時全身に悪寒が走った。

悪夢再来…。

ジリジリと男は間合いを詰めてくる。

不敵な笑みを浮かべたままで。

辺りを見回しても、人影は全く見当たらない。

「誰か!誰か助けて!」

大声で叫んだが喉が引き攣り、声が上擦る。

持っていた缶ビールの入ったビニール袋を強盗目掛けて投げつけた。

強盗が怯んだ隙に一目散で公園の出口を目掛けてダッシュする。

しかし、恐怖のあまり足が鉛のように重く、もつれて上手く走れない。

「くっそ!」

男は怒り、猛烈な勢いで駆け出すと私をグングン追いあげる。

あと数メートル、数センチ…ついに強盗は私の髪を捕えた。

そのまま髪の毛を掴まれ地面に押したおされた。その拍子に片方のヒールが脱げて転がる。

男は馬乗りになって私を抑え込んだ。