ジキルとハイドな彼

「まぁ、なまじ弱っている時だから、男前ってトコで気持ちが傾いちゃったのは解る気もするけど」

「それだけじゃないのよ。すっごく優しいんだから」…たまに性格が悪くなるけど。

「そんな刑事さんに薫は心を奪われちゃったわけね」

友里恵は頬づえをついて肩眉をくいっと上げる。

「すっかり彼の虜よ…」

私は溜息を着きながら再びグラスにワインを注ぐ。

だけど彼は私の手には届かない、高嶺の花だった。

今日あきの姿を見た時に、まざまざと思い知らされた。

髪を切っても、素敵な服を着ても、きっと彼の心は手に入らない。

私のちんけな自尊心なんて完膚なきまでに叩きのめされたのだ。


店を出て友里恵と別れる。

どうしよう…どこに帰ろう。

携帯の電源を入れるとメールが受信されていた。中を開きメッセージを確認するとコウからだった。

『何処にいるの?メール見たら連絡して』

今はコウに電話する勇気も起きない

電話をしたら、どうしてコウの家に戻らないのか理由を尋ねられるに決まってる。

なんて答えたらいいのよ。あきと鉢合わせして怖気づいて逃げ出しました、って正直に言う?

…そんなの惨め過ぎるじゃない。

私は溜息をついてメールを閉じると携帯を鞄に突っ込んだ。

こんなことなら少しくらい危険でも自宅にいる方がまだ気が休まる。

不動産屋もピッキング対策を施したダブルロックに付替えたって言ってたし。