ジキルとハイドな彼

「今日はどうしましょうか?」

鏡越しにイケメンの美容師さんが尋ねる。

「カラーリングとカットでお願いします」

何故か昔っから、嫌な事がある度に私は美容室に行く習性がある。

男性がキャバクラに行くのは、女性が美容室へ行く心理に似ているという説も今なら少し解る気がする。

どちらも褒められて気分がよくなるという事だろう。

ずっと伸ばしていた前髪を下ろし、髪の色をほんのり明るくすると少し気分が晴れた気がする。

こんな事で気分転換が出来るのだからコウに脳天気、と言われても仕方がない。

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「私は男運がない星の下に生まれたのよー」

私はへべれけになりながらテーブルに突っ伏した。

「もう、いい加減飲むのは辞めなさい」

向かいに座った友里恵が私の手からワイングラスを掠め取る。

「いや!やめないもん!」

私は友里恵の手からワイングラスを奪い返すと手酌でワインをドクドクと継ぎ足した。

一気にグラスを煽り「っだー」と溜息をつく。まるでおっさんだ。

美容室の後に、ショッピングで散々浪費をした挙句、友里恵を行きつけのダイニングバーに呼出し今に至る。

「でも、その男前の刑事さんも迂闊よねー」

友里恵はワイングラスをくるくると回し、中のワインに空気を含ませる。

「だって、薫とはお仕事上繋がりがある訳じゃない?それなのに遊びで手ぇ出そうとするなんてちょっと軽率過ぎる気もするけど」

人から遊び、と客観的に指摘されるとなんだか余計に落ち込む。