ジキルとハイドな彼

モデルのようなプロポーションに素っぴんでも美人だと解ってしまう目鼻立ち。

メイクも服もバッチリ整っている私よりも断然上質な女性であることが一目で解る。

スマートな身体に纏っているダボダボの服はきっとコウのものだ。

ショックで私は石のように固まった。

「航生ですか?ちょっと待っててくださいね」

女性は私の姿を見て一瞬目を見張ったものの、直ぐに取り直して二コリと微笑む。

…そして女が突然訪ねて来たというのに、ムカつくくらい落ちつきはらった余裕な態度。

「い、いえ!結構です!お取り込み中失礼しました!で、出直します」

私は慌ててその場を立ち去ろうとする。

「いえ、私は航生の…」女性は何か言いかけたが、その続きを聞きたくなくて私はそのままダッシュでエレベータへ向かった。

エレベータの扉が閉まると両目から一気に涙が溢れだす。

私は何を思いあがっていたのだろう。

コウが私を本気で相手にするなんてある訳ないじゃない。

彼の隣に相応しいのはあきのような女性だ。

エステにいって少しお肌がツルスベになったくらいで自信を持ってしまった自分の愚かさにもまた泣けてきた。

エレベータを降りるとダッシュで春日プレジデンスタワーを後にする。

負け犬が尻尾を巻いて退散する、とはまさにこのこと。

携帯の着信音が鳴ったのでディスプレイを見るとコウからだった。

ドキリとするが今は話す気にもなれないので、携帯の電源を切ってそのまま鞄に突っ込む。

踵を返すと私はある場所へと向かった。