ジキルとハイドな彼

「ま、まあ、そりゃそうだけど…高いんじゃないの?」

「お金ならあるから気にしないで」コウはいっそ清々しいほどきっぱり言ってのける。

「薫は恋人に裏切られ、強盗に入られて散々な目にあった。きっと多大なストレスを溜め込んでいるだろ」

コウはハッと目を見開く。

「そうだ!スパも予約出来たらお願いします」

畏まりました、とクロークの女性は笑顔で承る。

「一人で泊るの?」

「僕がいたら寛げないだろう」

もしかして、と言ってコウは妖艶な笑みを浮かべる。

「僕と一緒に泊りたかった?」コウは耳元で囁くと、私の髪を長い指でサラりと梳く。

「そ、そ、そんな訳ないじゃない!」

私はゆでダコのように耳まで真っ赤になる。

「だよね」と言ってコウは二コリと微笑んだ。

「シングルルームとスパ、どちらもご用意が出来ますが、いかがなさいますか?」

クラークの女性は穏やか且つ、キッパリとした口調でカットインして来た。