ジキルとハイドな彼

「失恋のショックで王蟲(オウム)のブロンズ像を衝動買いするなんてオタク以外の何者でもないと思うけど」

本当に気持ち悪いのよ、造りがリアル過ぎる…と呟き友里恵はぎゅっと眉間にシワを寄せた。

やれやれ、この人は…わかってないわね、とでも言うように私は無言で首を横に振る。

王蟲のブロンズ像は直径45㎝、重量はおよ3.6㎏。

存在感も抜群で、手に持つとズシリとした重厚感がある。

歩脚や触手まで細やかに再現されており、ここ何年かで一番の逸品だ。

現在、私の部屋で一番目立つベッド脇のサイドテーブルに堂々と飾られている。

そんなお宝を気味が悪いとは失礼千万。

「あれはね、世界に二つとないお宝よ?オークションで競り落としたんだけど、結構高くついたんだから」

非難がましい口調で抗議すると、眉を顰めて「いくらしたの?」と聞き返された。

「12万円」

友里恵は目を見張って絶句する。

その時、カウンターに座っていた男性がこらえ切れず吹き出した。

私達が訝しそうな視線を一斉に向けると、男はバツが悪そうにコホンと小さな咳払いをする。

「失礼、面白そうな話しだったので、つい聞き耳をたててしまいました」

男はいたずらが見つかった子供のように、肩をすくめて苦笑いを浮かべた。

紺地にストライプの入った細身のスーツに身を包み、いかにも仕事が出来きそうな風采をしているので、そのギャップに思わず女心がくすぐられる。

「私達はいたって本気で笑わせるつもりなんてなかったんですけど」

私がおどけて肩をすくめると、男は目じりに皺をよせて愉快そうに笑う。