ジキルとハイドな彼

「でも、今回の強盗騒ぎって聡の事件に関わりがあるのかしら」

小鳥遊は海老フライを頬張りながら、うーん、と考え込む。

「今は調査段階だから何とも言えないっす。でもまぁ、暴行が目的じゃなかったのは明らかですね」

小鳥遊がさりげなく言った言葉に、ゾクリと悪寒が走る。

恐怖がこみ上げてくるのを、小鳥遊に悟られないよう何気ない口調で、そうね、とだけ呟いた。

「と、なると物盗りの犯行かと思いましたが、金目のものは何もなくなっていなかった」

私はコクリと頷く。

「じゃあ、一体何を探していたのかしら」

「それをこれから調べて行く必要がありそうですね。今日薫さんから証言がとれて、また捜査に進展があるかもしれないっす」

「また何か思い出したら、尾花さんに連絡するわ」

「は?なんで尾花さんなんすか?」

小鳥遊はきょとんとした顔をしている。

「だって、何かあったら連絡するよう名刺もらったから」

小鳥遊はくるりとした丸い瞳を見開く。

「それって…ナンパじゃないすか?」

「それはないでしょう。警察よ?」私は訝しげな視線を向けた。

「いや、だってワザワザ尾花さんクラスが何かあったら、なんて名刺渡すなんてあり得ないっす。個人的に渡したとしか思えないです」

確かに…左手の薬指に指輪ははめられていなかった。

「葛城さんの前でもらっちゃいました?」

私はこくりと頷く。

「罪な人ですねえ」

はぁ、とため息をつくと、小鳥遊は残りの2/1をペロリと平らげた。