ジキルとハイドな彼

「それから玄関に向かったのですが、足首を掴まれ転んでしまいました。そこでもみあってるうちに、強盗は諦めたみたいで逃げて行きました」

一晩明けて落ち着きを取り戻し、脳震盪も殆どよくなったので、昨日より記憶が鮮明になる。

強盗が逃げていく後ろ姿を思い返した。

「その時、目出し帽がづれてて、短い髪と…そう、首もとにトカゲ?ヤモリ?みたいなタトゥーが見えました。後ろ姿だけだったか、顔は見えなかったけど」

尾花がチラリと視線を向けると、コウが書類の裏面と持っていたペンを差し出す。

「覚えてる範囲でタトゥーの絵を描いて貰えますか」

はい、と言って私は記憶を頼りに簡単に描いてみる

「こんな…感じだったと思います」コウと尾花は私が描いた絵を覗きこむ。

ゆがんだ楕円から線―――私は足のつもりで描いた―――が4本出ている。

「つちのこ…ですか?」尾花はかけていたメガネをずらしながら聞く。

「だから、トカゲです」

堪えきれなかったのかコウが噴き出し、誤魔化すように咳払いをする。

かろうじてポーカーフェースを取り戻し、ありがとうございます、と小声で言うと私から紙受け取った。

「その他に犯人の身体的な特徴は?たとえば身長とか体型とか」

気を取りなすように、尾花が尋ねた。

「身長は170cm前後だったと思います。体型は中肉中背で、目は一重瞼で釣り上がってる感じでした」

「ありがとうございます」

尾花は小声で耳うちし、コウは何度か頷く。これで聴取は終わりだろうか。

私の証言が役に立ったかどうかはわからないけど。