ジキルとハイドな彼

昨晩、腐女子会の後自宅に戻ってから強盗が入った経緯を掻い摘んで説明する。

「沖本さんは暴行などの被害には遭われていないようですが」

無表情のまま尾花が尋ねると、コウが微かに眉間に皺を寄せる。

「確かに、強盗に気づかれたら、何をされるかわからないと思いました」

私は昨晩の恐怖を思い出しブルリと身震いした。

「犯人は幸い私が起きたことに気づいていなかったので、手の届く範囲で抵抗する時に使えそうな物がないか探したところ、ヘアスプレーと王蟲(オウム)のブロンズ像が目にとまりました」

「王蟲… とは?」尾花は眉根を寄せる。

「腐海の森に住む生き物です」私が答えると、コウが「押収品12番です」と補足した。

尾花が書類をめくり、「これ、か…」怪訝そうな表情で尾花は呟いた。

「あ、あの、王蟲のブロンズ像はとてもプレミアがついていて大切なものなんです。後で返してもらえますか?」

「ことの次第によっては残念ながら難しいかもしれません」

尾花が微塵も残念がっていない様子で答える。

まさかこんなオモチャをいい歳した女が執着するとは思わなかったのだろう。

今ここで王蟲にこだわるのは賢明ではない。後でコウに甘えて頼めばどうにかしてくれるだろう。

私は咳払いをして話を続ける。

「失礼しました。抵抗出来そうなものを手近に寄せておいたところで、強盗に声をかけて、出て行ってもらうようお願いしました」

「そのお願いは聞いてもらえましたか」コウが片眉を上げてきく。

「ダメでした。それどころかサバイバルナイフまで出されちゃって」私はため息をつく。