ジキルとハイドな彼

先頭を歩く男は短髪にメタルフレイムの眼鏡を掛けている。歳の頃からしてアラフォーといったところだろうか。

鼻筋が通り美形には違いないが、きつね顔でどこか冷たい感じがする。

そして、その後ろには、見た事のある、いや何度みても見飽きることのない、麗しいコウの姿があった。

小鳥遊が声をかけるな、というように強張った表情で首を横に振るので、わかったわよ、と答える代りに私は鼻の頭に皺を寄せた。

「おい」

突然声を掛けられ、私と小鳥遊はビクリとして振り向く。

「何を騒いでいる」

きつね顔が抑揚のない冷淡な口調でいった。

その後ろにいるコウは私に気が付いたハズだが無表情のポーカーフェースを崩す気配もない。

今朝のアマアマの笑顔は幻だったのではないかと思わせる程だ。

小鳥遊はヨレヨレと上半身を起き上がらせ、敬礼をする。

「昨晩、春日町で発生しました強盗事件の被害者の方がお見えになったので、自分が刑事課に案内しておりました」

きつね顔は私に視線を向けると微かに目を見開いた…が、直ぐに無表情に戻る。

「それは失礼。ご協力感謝いたします。この男がなにか粗相でも」

「警察署だから静かにしろって突然口を塞がれたので、ひじ打ちをかましてやったのよ」

私は胸の前で腕を組ながら言うと、きつね顔はクスリと笑った。

「それは勇ましい。小鳥遊、女性に手荒なマネはするなよ」

「はい」小鳥遊は再度ヨレヨレの敬礼をする。

ちょっと可愛そうな事をしてしまった…。