ジキルとハイドな彼

「今日の格好は葛城さん好みですね。さてはお泊まりして昨日何かあった?」

小鳥遊が冷やかすようにニヤリと笑う。

「ないわよ。昨日は極限状態だったからね」

「でも一緒に寝たら、ちょっとはイチャイチャしたりするもんでしょ?」

私は手を横にパタパタと振って否定する。

「彼は3秒位で寝てたわよ」

「ふーん、でも一緒に寝たんだ」さりげなく小鳥遊は突っ込んでくる。

カマを掛けられて、まんまと乗ってしまった。

「仕事とプライベートは完璧に切り離すタイプだから、今回薫さんの事をどうしてここまで構うのか、正直謎ですよね」

「同情してるのかしら」

小鳥遊はおかしそうにハハっと笑った。

「そんなタイプ見えますか?」

小鳥遊がチラリと横目で視線を向けたので、否定する代わりに苦笑いを浮かべた。

「そういえば、昨晩葛城さんがスウェットなんて履いてるからビックリしましたよ!てっきり寝るときはシルクのパジャマでも着てるのかと思ってたから」

小鳥遊は冗談ではなく本気でそう思っていたような口ぶりだったので、私は思わず噴き出した。

「確かに着てそう!しかも絶対似合うよね」

「しかも髪の毛ボサボサで、眼鏡だったし!葛城さんも人間なんだなって親近感が湧きましたね。写メでも撮っておけばよかったかな」

「だめよ、そんなことしちゃ」

目を細めて軽く小鳥遊を諌める。いつも隙のない彼にとってあの姿は特別なのだ。

「確かにそんなことしたら、微笑みながら東京湾に沈められそうだ」

小鳥遊が怯えたように言うので、思わず声をあげて笑った。

「薫さん、着きましたよ」

数日前に連れて来られた白い四角い建物に車が入って行く。