ジキルとハイドな彼

かおる…薫…

名前を繰り返し呼ばれて、重い瞼をなんとか持ち上げる。

「おはよう」

太陽よりも眩しい笑顔がそこにあった。

目を擦りながら身を起こすと陽はスッカリ登り、時計は10時30分を差していた。

既にコウはスーツを着て身仕度を整えている。

「よく眠れたみたいだね」

「ええ、自分の神経の図太さには驚きだわ」私は苦笑いを浮かべる。

「疲れてたんだよ」コウはクスリと笑い、顔にかかった髪を梳く。

仄かにエゴイストプラチナムの香りが漂い、思わず抱きつきたくなってしまった。

「コウはもう行くの?」

「うん、昨日の事でちょっと調べる事が出来たから先に出るよ」

「そう…」

私の不安を察したのか、コウは私の顔を心配そうに覗き込む。

「薫は1人で大丈夫?小鳥遊に13時に迎えに来るようには言ってあるけど」

本当心細いが、仕事の邪魔をするわけにはいかない。

「大丈夫。まあ、強いて言うなら小鳥遊ってとこがちょっと気にかかるけど」

コウはクスリと笑う。

「確かに。キャラにはちょっと問題あるけど、ボディーガードには適任なんだ。武闘派だからね」

「そのようね」昨日の柄の悪い態度を思い出し、同意する。

「それと署に来るときは、なるべく目立たないようにしてきて」

コウがさりげなく釘をさす。

「あまり派手な格好はするなってこと?」

「そうだね。場所が場所だし、被害者に対する印象も違ってくるか」

被害者に好印象も悪印象もあるのだろうか。

聡の一件があるので少しでも心証をよくしておいた方がよい、ということだろうか。

とりあえず、わかった、と神妙な顔で頷くと、コウは安心した表情を見せた。