ジキルとハイドな彼

「今日は一緒にいてくれないの?」

抑えたつもりだが、自分でも驚くほど声に心細さが滲んでしまった。

「俺の家にいっしょに帰ろう」

ほっとして肩の力が抜けた。その様子を見て、コウは優しく微笑む。

「身の回りの物も少し持ってきたよ」といって見覚えのあるヴィトンの旅行カバンを持ち上げる。

「そ、それ… 」

「よかったね、盗まれなくて」

…いや、そうじゃなくて。

「あなたが用意したの?」

「そうだよ」

「ま、まさか下着も…?」

「だいじょうぶ、入ってるから」ニッコリコウが微笑む。

その瞬間、ロビーに私の絶叫が轟き、警察官が数名駆け込んできた。


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パトカーでコウのマンションまで送ってもらう。

部屋についた頃には窓の外を覗くと東の空が白んじていた。

家に帰り二人共ソファーに座り込み溜息をつく。

「大分疲れてるみたいだね」

「ええ、あなたも」

セキュリティ万全、かつ警察職員の彼も一緒にいるこれ以上ないってくらい安全性の高いこの部屋。

しかも広くてゴージャスだしな。

私はスッカリ安心しきってクワッと大きな欠伸をする。

「俺はソファーで寝るから、薫はベット使って」

「いいわよ、もう。2人でベットに寝ましょう」

これ以上、譲り合いのやり取りするのも面倒だ。

「ちょっかいださないでよ」念のため私が釘をさすと「そんな気力ない」コウは呟いた。