ジキルとハイドな彼

二人の姿を見るやいなや、コウは「随分お早い到着だな」と無表情で嫌味をかます。

「あ?警察は忙しいんだよ、兄ちゃん」

小鳥遊がコウに食ってかかる。上司に対して随分柄が悪い。

「もー薫さん、早速若い男を部屋に連れ込んじゃってー!隅に置けないなあ。葛城さんもビックリだぞ」

「小鳥遊くん、それギャグ?」私は首を傾げて尋ねる

「俺の顔を忘れたわけじゃないよな?小鳥遊」コウは顔色一つ変えず、抑揚のない声でいう。

「ああ?なんで俺の名前知ってんだ?!」

「小鳥遊、眼鏡かけろ」ぼそりと田所が指摘する。

小鳥遊は、へ?と惚けた声を出し、慌ててジーンズのポケットから黒いセルフレームの眼鏡を取り出して装着する。

「君の上司だからだよ」

「葛城警視!」小鳥遊は目にも止まらぬ速さで、敬礼した。

「田所さんもご苦労様です」コウは田所の方にも挨拶をする。

「いやー、葛城さんは本当に仕事熱心ですね。事件を聞きつけ、着の身着のまま駆けつけるとは、さすがだなぁ!」

小鳥遊が感心したように言うと、コウは一瞬バツの悪い顔をする。

今までパニックで気付いいなかったが、コウはスウェットにTシャツという居でたちだった。

眼鏡を掛けていて頭には寝癖もついている。

いつものパリっとしたスーツ姿しか見ていない小鳥遊が、直ぐにコウだと気づかなかったのもわかる気がする。

この人、本当に慌てて飛び出して来てくれたんだ…。

この状況で不謹慎だがキュンとしてしまった。

「たまたま先に到着したんだ」

すぐにいつものポーカーフェースに戻っていたが、寝癖頭のまま澄ましたところでイマイチ決まっていないのが、これまたキュートで思わず抱きしめたくなる。