ジキルとハイドな彼

「とりあえず、傷の手当をして警察をよばないとね」

私は涙でぐしゃぐしゃの顔を上げる。

「もういるじゃない」

「この事件は俺の手には追えない」肩を竦めてコウが言った。

「ちょっと失礼」と言って立ち上がると、部屋の隅でボソボソと電話を掛け始めた。

警察をよんでいるのだろう。

それが済むと私の隣に座り、私の髪をそっとかき揚げ傷口を診る。

「縫うかもしれないね」といって眉を潜める。

コウはタオルで顔の血を拭き取って傷を消毒をし、ガーゼを当てて簡単な応急処置をしてくれた。

その間、いつものような笑顔は見せる事なく、時折考えこむような表情を見せた。

しばらくするとマンションの前に数台の車が止まる音がした。

窓から除くとパトカーの赤色灯が点灯している。

警察が到着したようだ。

「緑ヶ丘署です」といって、制服をきた警官数名が部屋にキビキビと入ってくる。

それとは対象的にスーツ姿のおっさんと、私服の若者がのそのそと入ってきた。

前者は強面の田所のおっさん、後者は小鳥遊である。

おっさんは直ぐ見てわかったが、小鳥遊は白いTシャツに黒いニットを合わせ、細身のダメージデニムを履いている。

フワフワの茶色い髪を後ろに流しており、スーツ姿の時と随分印象が違ったため直ぐにはわからなかった。

「やーやー、沖本薫さん!また会ったねー」

小鳥遊がニヤニヤしながら近づいてくる。口を開けばやっぱり軽い。

今日のチャラチャラした格好の方がなんとなくしっくり来る。