ジキルとハイドな彼

スマートフォンを握り閉めたままドアの前でうずくまっているとインターフォンが鳴る。

身体がびくりと硬直し、恐る恐るドアスコープを覗くとコウが立っていた

玄関のドアを開けて中に招き入れる。

コウは私を一目見るなりギョッとした表情を浮かべる。

「怪我してるじゃないか。どうしたの?!」

ズキズキ痛む左のこめかみに手をあてると指先が赤い血に染まっている。

倒れた時にクローゼットの角に頭をぶつけた事を思い出す。

「起きたら部屋に人がいて、真っ黒い格好してて」

興奮状態で何から話していいかわからない。

「薫」両腕を捕まれ真っ直ぐに私を見つめる。落ち着いて、というように。

「物音で目が覚めたら知らない男の人が部屋にいたの。多分強盗、だったと思う…」

まさか…と呟き、コウの顔が強張った。

私は彼が想像した最悪の事態を否定するように頭を振る。

「大丈夫、抵抗したら出て行ったわ」

コウは床にゴロリと転がっている王蟲のブロンズ像に視線をむけると「やるね」と呟き片眉を上げる。

「だって、や、やらなきゃ、やられちゃうと思ったから」

軽口をたたこうと思ったが、震えて最後の方は声にならない。

コウは苦々しい表情で抱き寄せる。

「どうして私の身の回りでは変なことばかり起こるの?」

堰を切ったように涙が溢れ出し、コウにかじりつく。

もう大丈夫だから、耳元で囁き背中をさすってくれた。

コウの香りに包まれ、暖かい体温を感じていると、徐々に落ち着きを取り戻していくのがわかる。

ああ、いつもこの人の前ではボロボロだ。