ジキルとハイドな彼

「コウは最近春日井町に引っ越してきたの?」

「はい、祖父が体調を崩してしまったので、こちらのお店を手伝いに来られるよう、近くに越してきました」

「以前はどちらに?」

「奥沢です」私は思わず椅子からずり落ちそうになった。

ここから私鉄で10分ほどの距離で、思いっきり東京都である。

「出身は?」続けて私が尋ねると「国分寺市です」と答える

「生まれも育ちも東京じゃない。土地勘あるし、友達もいるでしょ」

「はい、でも近所にはいないので」コウはさらりと言ってのける。

「でもお互い名前で呼び合うとぐんと距離が縮まった気がしますね」

コウが子供のように無邪気に微笑むので、私もつられて、そうね、と笑顔で答えた。

「ではお近づきのしるしに、私の特技を披露しましょう」

「特技?」またおかしな事を言い出したので首を傾げる。

コウはサイドテーブルに備え付けられている小さな引き出しから、小さな赤い布で覆われた包みを取り出す。

開くと中にはカードが入っていた。

「これは?」一枚めくってみると美しい絵が描かれている。

「タロットカード?」

私が尋ねると、肯定する代わりに葛城はニッコリと微笑む。

「タロット占いがよく当たるんだ。薫も占ってあげるよ」

確かに葛城のどこか人間離れした美しさを以ってすれば第六感があってもおかしくない。

「うん」私はごくりとツバを飲み込んだ。