ジキルとハイドな彼

ガタガタという物音で目を覚ます。

辺りはまだ暗闇だった。

自分以外の何者かがこの部屋にいる気配が伝わってくる。

誰…?

眠気は一気に冷めて、恐怖と緊張で鼓動が激しくなる。

心臓が口から飛びでるかと思うほど。

そっと起き上がり目を凝らして辺りを見回すと、クローゼットの前で黒い影が動いている。

ここ最近連続で起きている老人と若い女性の独り暮らしをねらった強盗事件が頭を掠めた。

こ、これはもしや、お、お、押し入り強盗…?!

黒い影はこちらに背中を向け、クローゼットの中を物色しているようだ。

私が起きていることにはまだ気づいていない。

恐怖で混乱する頭で必死に考えようとする。

まず、私が目を覚ましていることに気が付けば、間違いなく最低でも何らかの暴行を受けるだろう。

かと言ってもこのまま寝たふりを続けるのは、危険の前にただ無防備でいることになる。

幸い強盗はまだ私が起きているという事に気づいていないようだ。

取るべき道は一つ…攻撃は最大の防御ってこと?

なにも強盗を捕えなくてもいい。ただ逃げるだけの時間を稼げれば…。

ベットから玄関までは強盗の物色しているクローゼットの脇をとおりすぎなくてはならない。

何か武器になるようなものはないか辺りをグルリと見渡す。

髪の毛をセットするスプレーと、名作王蟲(オウム)のブロンズ像がフト目についた。

ある作戦が頭に浮かび、頭でシュミレーションしてみる。

そんなに事がうまく運ぶはずはない…しかし、やるしかないのだ…。

「あ、あのーそこにいるのはどなたでしょうか」

震える声を絞り出す。