ジキルとハイドな彼

「私もそう思ったんだけど、違うのよ!手料理を嬉しそうに食べる姿とか、甘え上手な所とか、ちょっとワガママで強引な所とか全てがたまらなく愛おしいの!」

珠希は言い切ると肩で一息つく。

「薫の気持ち、今ならわかるかも。彼の丸くて茶色い目に見つめられたら、どんなお願いでも聞いてあげたいって思っちゃうのよね」

そっと華奢な手を私の肩におく。

だよねー!と激しく同意をして私は珠希の手を硬く握りしめた。

「今度は珠希が死体でも運ばされるんじゃないの?」

友里絵のは冗談めかして言うものの、今の状況だとそうは聞こえなかった。

結局、珠希がこの後の胡散臭い彼と会う約束になっていたので、この日は早めの解散となった。

自分が突っ走ている当事者の時は周りが見えなかったが、ハタから暴走している人を見ていると案外心配なものだ。

しかし、お硬い珠希をあそこまで骨抜きにするとはどんな男だろう。

客観的に見れば「どうしてこの人?」と思うかもしれない。

そして聡もきっとそう見られていたのだな、とも思う。

理由はどうであれ、私もやはり疲れが抜けていなかったので、早く帰れる事はありがたかった。

二人に話した事で気持ちも落ち着き今夜はぐっすり眠れそうだ。

ショックだ、心配だ、なんて言った所で人間体調がすぐれないと結局自分の事しか考えられないものだ。