お菓子な男の子

風が静かに吹き抜けていった。
さっきまできれいだった星空は、急に雲に覆われてよく見えなくなってしまった。


「どういう……こと……?」
「そのままの意味だよ。俺たちは本当は腹違いのきょうだいってこと」
「そんなことって……」


意味がわからない。わからなすぎる。腹違いのきょうだい?私と真島くんが?そんなこと、お母さんから聞いたこともない。もちろんお父さんからも。
それにこれが本当の話なら、お父さんは……


「よくある話だろ。俺たちの父親、諸星庵(もろほしいおり)は浮気してたってこと。だからまぁ、正式には俺の父親にはなってない。俺の父親は不明のまま。母さんは未婚の母になってる」


真島くんは淡々と話を続ける。私なんていないみたいに。


「そのことを俺が知ったのは諸星庵が死んだとき。母さんから聞いたよ。全部聞いた。母さんが裏切られたことも」


私は声が出せなかった。状況を頭の中で整理していくことに必死で、どう返せばいいのかまで頭が回らない。聞きたいことだってたくさんあるはずなのに、言葉にできない。


「俺の母さんと諸星庵はさ、もともと大学時代に付き合ってたんだ。結婚する予定もあったらしい。卒業して母さんは就職、諸星庵は大学院に進んだ。院を出たら結婚するって。でも、諸星庵は院を出る少し前に母さんを捨てた。そして同じ院生だったお前の母親と結婚した」


暗闇で真島くんの顔が見えない。聞こえてくる声は、怒っているのか悲しんでいるのか、わからない。


「そのとき、母さんの腹にはもう俺がいた。だけど捨てたんだ。俺たちのことを……」


言葉は静かに消えていった。