譲さんは、コーヒーを一口飲むと謝りだした。

「ごめんね、ほのかちゃん。

君の反応があんまり可愛かったからつい意地悪しちゃったんだよね。」

私の反応が可愛い?譲さんは余程目が悪いのではないか。

「昼休み俺はここが痛いって言ったの覚えてる?」

覚えてるもなにもそのことで今こうして会ってるんじゃないですか。

「は、はい。

本当にすみませんでした。」

どうか高額な慰謝料を請求されませんように。そう心の中でお願いしながら頭を下げた。

「ごめん、ごめん。

違うんだそう言う意味じゃなくてね。

ここってつまり俺のハートってこと。

俺さあ、今朝ほのかちゃんにぶつけられて君を見たときから俺のハートがドキドキしっぱなしなんだ。」

「それってやっぱり心臓発作寸前とかですよね?」

あー、明日の朝刊に『女子高生先輩にぶつかり殺害』の文字がー!

「違うって、俺はほのかちゃんのこと好きになっちゃったってことさ。」

ニコッて笑う譲さんは茶髪にピアスの怖い先輩ではなくなっていた。

「……、




えっーーーーー!?」

ようやく理解した私はただただ驚くばかり。

だってわたしだよ。わ た し!メデューサだよ。

「そんなに驚くことかな?

だってほのかちゃんスゲー可愛いから今までだって告られたことあるでしょう。」

やっぱりこの人よっぽど目が悪いんだ。

私が可愛いとか告られたことあるとか、あるわけないじゃないですか、友達だっていなかったのに。

「譲さんて目悪いですか?」

やっと言えたセリフがこれだった。


「へっ?

いや、俺視力両目とも1.5。」

素晴らしい。

嫌々、そんなことより。

「あの、私のどこが一体可愛いんですか?

自分で言うのもなんですが、可愛い要素が今まで生きてきて見当たったことがないんですけど。」

なんで私がこんな事いわなきゃなんないんだろう。軽く落ち込んでくる。

「えっ、マジで?

こんなに可愛いくて魅力的な目してるのに?」

「魅力的……?」

初めて言われた言葉に思わずつぶやいてしまった。


「そう、君の瞳はすごく魅力的だよ。俺はその目にやられちゃったんだ。」

なんてこの人はさっきから恥ずかしくなるセリフを平気で言ってくるんだろう。
でもちょっと嬉しいかも。だってこんな風に言ってもらえたのって楓が私を変えてくれたおかげだもん。
私は自分を誉めてくれたというより楓が誉められてるようで嬉しかった。

「ありがとうございます。

好きだって言われたのも魅力的だって言われたのも初めてで正直ビックリですけど。」

「そうなの?

君のクラスのやつら見る目ねぇーな。

でもラッキーか、俺がほのかちゃんに初めて告った相手なんだから。

そう言う事なら返事は直ぐじゃなくていいよ。

まずはお友達って所からかな?」


また私に新しい友達ができた。

「はい。友達ができて嬉しいです。」

あれっ?譲さんなんか変な顔してるけど?

「あのー、それで慰謝料はいくらでしょうか?」

私は本題に入ったつもりだったのに譲さんは笑ってなにそれ。で終わりにしてしまった。