「んー、あーいたいた。

早乙女さん。お待たせ。

じゃあ行こっか。」


一体何処に連れて行かれるの?まさか体育館の裏で仲間が待っててそこで慰謝料請求とか。

「ど、ど、どこに行くんでしょうか?」

怖くて思わずどもってしまった。


そんな私の気持ちとは反対に明るい声で、


「ついてくればわかるよ。」

なんてウインクしながらさらりと言う。
かえって怖さが増してる気がする。

仕方がないので下を向いて後ろを歩く私に、そんなに怖がらなくていいのに。って、貴方が私を怖がらせてる張本人なんですけど。と言いたいのを飲み込んでヘラヘラと笑う。


着いた先は一件のファミレス。

体育館の裏ではなく良かったとほっとしたけどもしかしてこの中に仲間がいるかもしれない。油断させといてってやつかも。まだまだ気は許せない。

ところが席に案内されても回りにそれらしい人は見当たらない。

席につくなり先輩は、

「早乙女さんって下の名前なんて言うの?」


「ほのかです。」


「ほのかちゃんかぁー。

俺は、2年の篠宮 譲。ちなみにサッカー部のエースストライカーね。」

エースストライカー?サッカーをまったく知らない私にはそれが一体どんなものなのか全くわからない。

「あのー、篠宮先輩。」

「篠宮先輩は止めてくれるかな?

俺とほのかちゃんの仲じゃない?」


一体全体どんな仲なんだろう。あっ、被害者と加害者だよねこの場合。それなら言うこと聞かないとだよね。


「それでは、何とお呼びしたらいいでしょうか?」

「うーん、そうだなー。皆は俺の事譲って呼んでるからそう呼んでよ。」

「そ、そんな先輩にむかって呼び捨てなんてできません。」

「俺は別に気にしないんだけどな。」

そうかも知れないけど私は絶対無理です。

「では、譲先輩はいかがでしょうか?」


「うーん、それだと堅苦しいかな。」

「それでは、譲さんでは?」

もうこれ以上は無理です。

「仕方ないっか。まあ徐々にだよな。」


なんか一人で納得してません?

「それで、ゆ、譲さん。説明をお願いしたいのですが。」

「その前に、なんでそんな話し方なの?

面白いけど、他人行儀すぎじゃない?

もっとフランクに話ししようよ。」

そんな事言われても私は加害者な訳だし。でも被害者の言うことは聞かなきゃ。

「わかりました。なるべく努力します。」

「やっぱり面白いね。ほのかちゃんわ。」